本プロジェクトの背景と課題
運送契約をはじめとする複数種類の契約書が案件ごとに締結されており、1つの契約で複数の契約書が並行して扱われるという特性があります。
しかしそれぞれの契約書は構成・表現・条項の位置が異なるため、社内規定に沿ったチェックを行う際に、
- どの契約書の
- どの条項を
- どの観点で確認すべきか
が案件ごとに変化し、レビュー作業が高度に属人化していました。
さらに、運送業界では契約書の修正に「取り消し線(ストライクスルー)」を用いる慣習が根強く残っています。
その結果、
- 有効条文
- 修正された無効条文
が同時に並んで記載されることが多く、
AIが取り消し線部分を誤って“有効文言”として解析してしまう リスクが現場で問題となっていました。
こうした背景から、契約書チェックの品質向上と省力化を両立するためには、
- 契約書ごとに異なる構成を理解し、
- 社内チェック項目に対して対応箇所を自動的にマッピングし、
- “無効化された文言”を正しく判別して除外する
といった高度な文書理解能力が求められています。
本プロジェクトは、複数契約書横断での条項抽出とリスク検知をAIにより自動化し、
契約書レビュー業務の標準化と負荷軽減を実現することを目的としています。
技術概要とアーキテクチャ
本プロジェクトでは、複数種類の契約書を入力として読み込み、AIが各条項の構造を解析したうえで、重要条項の特定・社内規定との突合・リスク判定・差分抽出を行うレビュー基盤を構築します。
まず、PDFやWord形式の契約書を取り込み、OCR・レイアウト解析により条項・段落・表記の位置関係を正確に再現します。業界慣習で多用される取り消し線の判定ロジックを実装し、無効文言を学習上のノイズにしない仕組みを組み込みます。
次に、自然言語処理(NLP)により条文の意味を理解し、契約形態(運送契約、業務委託等)ごとの“チェック要求事項”と自動的に照合します。複数契約書を横断し、指定されたチェック項目に対して「対応する条項がどこに存在するか」を最適にマッピングすることが可能となります。
抽出された条項・リスク・論点は大規模言語モデル(LLM)によって整理され、「該当箇所の根拠」「想定されるリスク」「不足している条項」を可視化します。RAG技術により、AIが分析の根拠となる原文を提示しながら説明を生成するため、レビュー担当者が短時間で判断できる環境を提供します。
技術詳細
- 文書解析・OCR
- 契約書PDF/Wordの構造解析(段落・見出し・条番号・注記の抽出)
- レイアウト保持型OCRによる高精度テキスト抽出
- 取り消し線の検出と無効文言の排除(重要技術要素)
- 条項構造化とマッピング
- 契約書ごとの条項の階層構造化
- 契約書タイプ(運送契約・委託契約など)の自動分類
- チェック項目 → 該当条項の自動マッピング
- 複数契約書間の条項対応付け
- 重要条項・リスク検知AI
- 損害賠償・責任範囲・再委託・秘密保持などの主要条項の自動抽出
- 社内規程に基づく遵守判定ロジック
- 曖昧表現・不利条件・欠落条項の検知
- 過去契約データを活用したリスクスコアリング
- 差分比較・類似検索
- 取り消し線前後の文言差分検知
- 過去の契約書との差分自動抽出
- 類似契約案件の検索とレビュー情報の再利用
- LLMによる説明生成
- 重要箇所要約、リスク説明、改善提案の自動生成
- 引用付きの根拠提示(RAG)
- レビューレポートの自動作成
HI3の提供価値
AIレビュー基盤により、これまで属人化していた契約書チェック業務は標準化され、 担当者ごとに異なっていたレビュー品質を均一化することができます。 特に、複数契約書を跨るレビューの負荷が大幅に軽減され、 「どの契約書のどこを見れば良いのか」をAIが提示するため、 チェック時間を大きく短縮できます。
また、取り消し線部分の誤判定という業務特有の課題を解消することで、 AI判定の実務信頼性が向上し、現場で安心して使える仕組みを実現します。
さらに、過去契約書との比較や社内規定との突合を自動化することで、 レビュー漏れによるリスクを減らし、法務・管理部門のガバナンス強化にも貢献します。
最終的に、契約書チェックの省力化、レビュー精度向上、リスク低減を同時に達成し、 企業全体の契約業務プロセスの高度化を支える基盤として機能します。





